Hirai Racing Team STUDIO

目次
  1. 競泳×バイク「意外な組み合わせ」からスタート
  2. 実走感×走行データ クロストレーニングの効用を実感
  3. 「心肺フィットネス」の向上で健康寿命を延ばす
  4. 東京・荻窪「地元」にバイクトレーニングのスタジオを
  5. 「中高年ランナー」も「部活帰り」も専門トレーナーがサポート
interview

スペシャル対談INTERVIEW

東京・荻窪から始める「みんなの健康づくり」
ジョギングや部活と組み合わせ×プロのサポート
=「楽しく効く」バイクトレーニングを

競泳日本代表コーチ/東洋大学水泳部監督の平井伯昌率いる平井レーシングチームが2023年秋、バイクトレーニングスペース「平井レーシングチームスタジオ」を開設する。東京・荻窪の平井家の一部を改装、東洋大学水泳部で活用している「ワットバイク」を設置して、Wattbike社(英国)公認マスタートレーナーがパーソナルトレーニングのプログラムづくりをサポートする。トップアスリート向けかと思いきや、ジョギング好きの中高年層や部活帰りの学生など「地域の皆さんの健康増進に役立てれば」という平井氏。バイクトレーニングとの出合いからスタジオ開設への思いまで、ワットバイク日本総代理店の日本サイクス代表・大木満氏と語り合った。

競泳日本代表コーチ/東洋大学水泳部監督 平井伯昌

平井伯昌

競泳日本代表コーチ/東洋大学水泳部監督

Wattbike Japan/日本サイクス 大木満

大木満

Wattbike Japan/日本サイクス

競泳×バイク「意外な組み合わせ」からスタート

大木

あれは忘れもしません、2018年9月。平井先生から「ワットバイクについて知りたい」と連絡をいただいて。 いや驚きました。アテネと北京の五輪で連続2冠、100mと200m平泳ぎで4つの金メダルを獲得した北島康介選手をはじめ、世界を舞台に活躍する競泳メダリストたちを数多く育ててきた平井コーチのことはもちろん存じ上げていて、一流の指導者から突然、直接のお問い合わせでしたから。

平井

その節は驚かせてしまい失礼しました(笑)。私がワットバイクに関心を持ったきっかけは、2016年リオデジャネイロ五輪100m平泳ぎの金メダリスト、英国のアダム・ピーティー選手。彼がトレーニングに使っているという話を聞いたんです。

同じリオ五輪では、指導していた萩野公介選手が400m個人メドレーで金メダルを獲得。次の東京大会に向けて新たな練習メニューを模索する中で、ピーティー選手のワットバイクトレーニングのことが頭に浮かび、販売元を探して日本サイクスさんにメールを送ったという次第です。

大木

大変うれしいお問い合わせでしたが、実は最初に思い浮かんだのは「なぜ水泳で?」でした(苦笑)。
ワットバイクは2009年に英国で発売、2011年から日本での販売が始まりました。もともと私を含むWattbike創業グループと英国自転車連盟がエリート自転車競技者のトレーニング用に共同開発したもので、日本での普及も競輪をはじめとする自転車競技選手を中心に始まりました。
その後、ラグビーやバスケットボール、陸上競技などでの導入が進みました。特に体の大きなアスリートがランニング動作を行う際には、体重もあるので、着地衝撃によって膝、足首などに大きな負荷がかかって障害のリスクが高まります。その点、バイクは「オフフィート(OFF FEET)」=足を地面に付けずに着地衝撃なしで効果的なトレーニングができるのが大きなメリットです。
で、その観点からいくと、水泳はそもそもオフフィートの競技ですから、水泳界においてバイクトレーニングの需要が高いとは考えていませんでした。

平井

「水中以外」の新鮮かつ効果的な練習メニューが欲しかったんです。
例えば萩野選手の場合、2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得後に東洋大学に入ってリオ五輪までの4年間、厳しいトレーニングを重ねて金メダルをつかみました。さて、そこから次の東京五輪までの4年間をどうするか。
まず「最高の結果が出たトレーニングを踏襲する」といった選択肢はありません。世界中で日々新たな工夫が重ねられ、新たな技術が開発され、情報はすぐに共有される時代に、ただ繰り返すことは後退でしかない。頂点から次の頂点を目指すには、新たなチャレンジが不可欠。練習に新鮮さと刺激をもたらすツールとしてバイクは面白そうだと思いました。
また、後に東京五輪で200m/400m個人メドレーの金メダルを獲得する大橋悠依選手も当時、東洋大学で練習に励んでいましたが、膝の故障が続いていて。バイクによるトレーニングは効果的だろうという見立てもありました。

競泳×バイク「意外な組み合わせ」からスタート

実走感×走行データ クロストレーニングの効用を実感

大木

ワットバイクの大きな特長の一つに「実走感」があります。従来、スポーツクラブや競技スポーツ現場などで使われていたバイクは電磁、摩擦といった負荷抵抗システムですが、ワットバイクは実走感を極限まで高める目的で空気抵抗システムを採用しました。

これにより、ロードバイクによる走行感覚=本格的な実走感が得られ、ハムストリングスや臀筋など鍛えにくい部分を効果的に鍛えつつ心肺能力を高めることができます。また、すべてのワークアウトは数値化され、ペダリングカーブとともにリアルタイムでモニターに表示されます。

平井

どう使うかを考えたとき、イメージしたのは、いわゆるクロストレーニング。ワットバイクとスイムをいかに効果的に組み合わせるか。まずはバイクをスイム前のウオーミングアップ的に使ってみようと、大木さんにプログラムの相談をしましたね。

大木

ワットバイクにはもともと、一流のスポーツ科学者陣が作成した多くのトレーニングプログラムが組み込まれています。更にそれをカスタマイズすることで様々な目的に適うメニューをつくることが可能です。

平井

当初は、まずトレーニングルームで20~30分間バイクに乗ってから、プールに移動してスイムの練習を、といった形を想定しましたが、ワットバイクは電源が要らないからプールサイドに置けるんですよね。

そうなると、メニューの幅がグンと広がる。例えばプールサイドで30秒間全力でバイクをこいで、そのままプールに飛び込んで50m全力で泳ぐとか、8分間バイクをこいで800m泳ぐとか、バイク=ウオーミングアップという枠を超えて、いろいろな組み合わせが可能になる。

練習のバリエーションが増えてマンネリ化が防げるのはもちろん、水中練習だけではかけにくい負荷をバイクで効果的にかけることで持久力が付いたり、キックのバランスが良くなったり。様々なメリットがありました。

実走感×走行データ クロストレーニングの効用を実感

「心肺フィットネス」の向上で健康寿命を延ばす

大木

ワットバイクによるトレーニング目的の一つとして「心肺フィットネス」の向上があります。心肺フィットネスの向上とは「運動中の筋肉への酸素供給能力および筋肉の酸素消費能力」を高めることです。その評価基準が「最大酸素摂取量」(VO2max)です。

ワットバイクでは簡単なテストで最大酸素摂取量の数値と心肺フィットネスに関するスコアが測定できます。このデータを基に、各人の心肺フィットネスレベルに合わせたプログラムでトレーニングを重ね、心肺フィットネスを向上させる。これがアスリートのパフォーマンス向上に寄与するわけです。

そしてこの心肺フィットネスの向上は、一般の人たちの健康増進にも大きなメリットをもたらします。そもそも私たちは生きている間ずっと呼吸を繰り返していて、これは生命維持に不可欠な働きです。しかし、それを受け持つ「心肺」やその酸素摂取の仕組みなどについては、あまり知られていない......。

平井

普段の呼吸は意識せずに行っているものですし、深く考えたりする機会は少ないかもしれませんね。

大木

意外に思われる方が多いかもしれませんが、人が同じ強度の運動をするときに摂取する酸素の量に大きな個人差はありません。例えば60歳オーバーの私と30代の男性が一緒に時速5kmで歩行した場合、酸素の摂取量はほぼ同じです。

しかし、疲労度は違います。その要因こそ最大酸素摂取量の違いです。同じ運動強度でも、私は自分の最大酸素摂取量の60%で動いている、対して30代男性は50%で動いている、となると当然、私のほうが疲れるわけです。つまり、最大酸素摂取量を向上させることで、疲れにくい体を手に入れることができる。

「心肺フィットネス」の向上で健康寿命を延ばす
平井

いわゆる持久力が付く。競泳で持久力というと中長距離の種目が思い浮かびますし、短距離種目でも1日に複数の予選レースをベストな状態で戦いたいと考えれば大事な要素になります。もちろん日常生活でも「疲れにくさ」は魅力的ですね。

大木

しかしこの最大酸素摂取量は、対策を取らないと加齢とともに低下します。例えば高齢者が階段を上ると息が切れる、簡単な作業でも疲れやすくなる、といった事象の原因はここにあります。中高齢者の「生活の質」を考えたとき、かなり大きな部分が最大酸素摂取量の大小によるといっても過言ではありません。

平井

私はまず競泳コーチの視点からワットバイクの効用に注目したわけですが、大木さんから以前こうした話を聞いて、いわゆる「健康寿命」の観点からも大いに興味が湧きました。

「心肺フィットネス」の向上で健康寿命を延ばす

東京・荻窪「地元」にバイクトレーニングのスタジオを

大木

欧米ではすでに様々な知見が蓄積されていて、例えば米国の心臓学会は、最大酸素摂取量が1ポイント上がると、健康寿命が45日延びるという研究報告を発表しています。
日本では2022年11月から静岡県で中高齢者の心肺フィットネスの向上を目的とするプロジェクトがワットバイクを使って行われています。伊豆ペロドロームが東京五輪の自転車競技の会場となったのをきっかけに「サイクリング運動による住民の健康増進を図ろう」という取り組みの一環で、第1期では30代後半から80代の約30人の方が3カ月のトレーニングプログラムに参加しました。その結果、最大酸素摂取量は参加者平均で2.33ポイント向上しました。

平井

私も選手たちのトレーニングに交じってワットバイクに乗っていて、主たる目的は健康維持です。やはり頑張った成果が具体的なデータで分かると励みになるし、継続する動機づけにもなりますね。

大木

そうした様々な利点を熟知されている平井先生と、ワットバイクの更なる普及や活用について話し合っている中で、「平井レーシングチームスタジオ」のお話が進んできました。

平井

私は今、東京の荻窪に住んでいて、この街がとても気に入っています。家は駅から少し離れた川沿いにあり、静かで暮らしやすい。そんな環境で日々を過ごす中、ご近所でジョギングをしている人がとても多いことに気がついたんです。
早朝、板橋にある東洋大学のプールに向かって車を走らせているときも、夕方に散歩しているときも、妻に聞くと昼間も、たくさんの方が走っていて、地域の皆さん、特に中高年の方々の健康意識の高さには感心するばかり。なのですが、あぁ、あの走り方だと膝を痛めてしまいそうで心配だなとか、いろいろ気になることもあって......。

大木

先生、本当に根っからのコーチ気質ですね(笑)。

平井

(笑)。そんな中で、私にできることは何かないかなと考えていたところに、大木さんからワットバイクの活用についての相談があり、我が家の道路に面したところにちょうど小さなガレージスペースがあり。ならば、ここでワットバイクを使ったトレーニングができるようにしたらどうだろうと思い至ったわけです。

大木

そうした新たな取り組みにご一緒できること、とても楽しみです。ワットバイクを使って地域の皆さんの健康増進のお役に立てるようにということで、静岡県をはじめとする各地での心肺フィットネスプログラムの経験を生かしつつ、そこに平井先生の豊富な知見を加えていただいて、よりパーソナルで効果的なプログラムを提供できるようにしていきます。

平井

利用者の皆さんがそれぞれの目的や目標に合うクロストレーニングに取り組めるようにしたいですね。例えば、毎日5km走っている人のトレーニングに週に2回、ワットバイクを組み合わせてみる。黙々と走る日々に別のメニューを組み込むことでマンネリ防止になりますし、ランニングとは違う筋肉を使うことで体のバランスを整える効果も期待できます。

東京・荻窪「地元」にバイクトレーニングのスタジオを

「中高年ランナー」も「部活帰り」も専門トレーナーがサポート

大木

パーソナルプログラムの作成は専門のトレーナーがサポートします。
合田祐美子は早稲田大学時代、インカレの自転車ロードレース競技で優勝し国際大会でも活躍した経験を持ち、早大スポーツ科学部大学院で専門的な知見も得ています。選手時代からワットバイクをトレーニングに採り入れていて競技引退後、当社に入社しました。バイクに乗ること自体は難しくないとはいえ、例えばサドルやハンドルの位置が正しくないとトレーニングの効果が上がりませんし、ケガの原因にもなる。そうした基本からペダリング技術、モニターデータの見方までしっかりサポートします。

平井

トップ選手の育成とも、大学での学生教育ともまた違う取り組みなので、いろいろ試行錯誤を重ねつつ、地域の皆さんと一緒に良い形にしていければと思っています。
プロフェッショナルな専門のトレーナーのサポートということで、参加資格のハードルはかなり高いのでは? そんな心配を抱く方がいるかもしれませんが、例えば「数年にわたったコロナ禍の中、外出を控えたりしてすっかり体がなまってしまった」......そんな方も歓迎です。
トレーニング用スペースの都合上、プログラムは少人数の募集となります。年齢、性別、運動経験などについては特に制限を設けずのスタートを考えていますが、大木さん、それでよいですかね?

大木

すみません、バイクの仕様上、身長150㎝以上という条件だけ付けさせてください。安全かつ効果的なトレーニングを行っていただくため、何卒ご理解を。

平井

「部活帰りの少年少女」たちにもぜひ来てもらいたいですね。体が急速に大きくなり、バランスも変わりやすい成長期に過度な走り込みなどでケガをしてしまうのを避ける意味でもバイクトレーニングは有効だと思います。とはいえ、ワットバイクのような本格的なマシンを利用できる学校は少ないでしょう。
また日本では、子どもの頃から一つの競技に絞って練習を積んでいるプレイヤーが多い。バイクをトレーニングに加えることで、単一競技だけでは鍛えにくい部分を効果的に強化でき、それは専門の競技に必要な能力をさらに伸ばすことにもつながります。

大木

ジョギングや散歩を楽しんでいる中高年の皆さんから部活帰りの学生の皆さんまで、幅広い方たちのニーズに合うパーソナルなプログラムづくり、頑張ります。

平井

ワットバイクでペダルをこいでいると、その動作がスムーズに行われているかがモニターで確認できます。慣れないうちはどうしても踏み込む動作だけでペダルを回そうとするのでバランスが悪く、モニターにはゆがんだ無限大記号のような波形が映る。それが、ハムストリングスなどを正しく使った理想的な動きができると、波形がきれいな円になっていく......。

これが何とも気持ちいい(笑)。ぜひ皆さんにも実際に試していただきたいです。このプロジェクトにご興味を持っていただけたら、お気軽にこのページの「お問い合わせ」欄からアクセスしてみてください。

東京・荻窪から始める「みんなの健康づくり」。ジョギングや部活と組み合わせ×プロのサポート=「楽しく効く」バイクトレーニングを
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東京・荻窪から始める「みんなの健康づくり」
ジョギングや部活と組み合わせ×プロのサポート=「楽しく効く」バイクトレーニングを

アクセスACCESS

  • 所在地
    〒167-0051
    東京都杉並区荻窪2-4-28
    平井レーシングチームスタジオ
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    ・JR荻窪駅(中央本線) 東口
    ・東京メトロ(丸ノ内線)
     東改札 徒歩15分